広報誌や社内報のように、定期的に発行し続けるパンフレットの最大の悩みといえば「ネタ」が尽きてしまうことでしょう。
これは定期刊行物の宿命であり、私が今まで携わってきた広報誌・社内報でも、ほとんどの担当者様が悩んでいらっしゃいました。
そこで、このコラムでは広報誌や社内報のネタに困った時の解決法をお教えしたいと思います。
といっても、「明日使える企画ネタ10選!」みたいに、具体的なネタをお教えするわけではありません。
そういった、すぐに使えるネタ集のようなサイトは「広報誌 ネタ」などでググればいくらでも出てきますので、そちらをご覧ください。
なんてことを言うと塩対応をしているように思われるかもですが、そんなつもりはありません。
むしろ逆で、「魚を与えるより、魚の釣り方を教えよ」のことわざのごとく、目先の解決法よりも根本的な解決法をお教えすることで、長く困らなくて済むようにお手伝いしたいのです。
ということで、これまで20年の編集ライター経験のなかで実際に活用してきた「ネタに困った時の解決法」として、「視点を変えてみる」「キーワードで考えてみる」「切り口を変えてみる」という3つの方法をご紹介していきたいと思います!
広報誌のネタに困ったら「視点」を変えてみる
広報誌や社内報に限らず、会社案内パンフレットでも営業チラシでも、パンフレット類を制作する際に最も排除しなければならないものは「主観」です。
平たく言えば「経験とカン」、あるいは「好み」ってやつですね。
ご自身の経験やカン、好みに頼っている以上、視点は「自分の内側」にあります。そして、その状態が続くと、アイデアはいずれ枯渇してしまうのです。
プロはどんどん自分の内側からアイデアが湧いてくる、と思われているかもしれませんが、よほどの天才でない限りそうではないと思います。
むしろプロほど「自分の外側」に視点を持ち、それを足がかりにアイデアを生み出しているのです。
というわけで、私を含め多くのプロが実践している、自分の内側から外側に「視点を変える」方法からご紹介していきます。
「ターゲット・発行目的」を根拠にネタを考えてみる
まず、有効なのが、広報誌の「ターゲット」と「発行目的」を根拠に考えてみるという方法です。
どんなネタがいいのか、その答えは「読者の中」にあります。
つまり、自分がどんなネタ(企画)を作りたいかではなく、読者がどんなネタを読みたいのかということの方が重要なのです。
その際、基準として役に立つのがターゲットと発行目的です。
どんな方々に向けて作られている広報誌なのか、どんな目的で発行している広報誌なのか、そこから逆算しながら考えていくのです。
そうすれば、少なくとも自分の経験やカン、好みなどを頼りに考えていた時よりは視点が外側に移るため、主観が入り込む余地も減り、新しいアイデアが湧いてくると思いますよ。
意外なネタが「関係のない人」から出てくる
次に有効な視点の変換方法は、「人に聞く」という方法です。
というと、「いや、いつもチームのみんなで考えてるから」と思われる方もいるでしょう。
でも、ここでいう「人」とは、広報誌の制作と「まったく関係のない人」です。
というと、他部署の同僚などを思い浮かべる方が多いかもしれません。それも悪くはないんですが、もっと適任者がいます。
私は今でも、よく奥さんに聞いています。
もちろん奥さんは、同じ会社の人でもなければ、業界も違うし、広報誌作りのことなどなーんにも知らない、いわば「素人」です。
ここがポイントです。
視点を変えるために人にアイデアを求めるなら、あなたが手がけている広報誌のことはもちろん、会社のことも、業界のことも知らない門外漢の方をおすすめします。
その方が、あなあたが思いつきもしなかった斬新な視点の意見が出てくる可能性があるからです。
同じ広報誌制作チームの人や、同じ会社の人に聞くこともそれはそれで有効です。でも、視点はそこまで変わらないでしょう。
その点、まったく関係のない人の場合、視点もまったく変わります。
もちろん、門外漢すぎて的外れなアイデアが出てくることもありますが、そこは修正しながらうまく誘導していけば、結構、参考になるアイデアが出てくるんです。
もし本当に広報誌や社内報のネタにお困りだったら、ご家族だったりお友達だったり、まったく広報誌の制作に関係ない人に聞いてみてください。
一人で悩んでいるよりは、何らかの突破口が見えてくると思いますよ。
困った時はネタの宝庫「本屋」へ行こう
最後におすすめしたい方法が「本屋へ行く」という方法です。
これも私自身、いまだによく使っている方法です。
本屋は最新のネタの宝庫です。特に書籍のタイトルや雑誌の表紙に書いてある見出しを眺めて歩くだけでも、いろんなヒントを得られます。
これが、視点の変化につながるのです。
まして、あなたが今制作している広報誌とターゲットが近い書籍や雑誌が見つけられれば、いうことなしです。
その本がどんな企画を立てているのか、ぜひ参考にしましょう。あ、もちろん、丸パクリはやめましょうね。あくまでも「参考」に、ということで。
ちなみに、図書館ヘ行くという手もあります。こちらも本の宝庫ですからね。
ただ、情報の新しさという面では本屋さんに軍配が上がります。広報誌は定期発行されることが多いため、「旬なネタ」との親和性が高い冊子です。
そういった意味でも、最新情報の宝庫ともいえる本屋さんは、今が旬の視点を得られる場所といえます。
広報誌の担当者の方は、ネタに困ったときだけでなく、日常的に本屋を見つけたら店内をブラつく癖を持っておくといいですよ。
これは、制作会社時代の上司に言われたアドバイスであり、いまだに私は続けています。
広報誌のネタに困ったら「キーワード」で考えてみる
次の解決方法は、「キーワード」で考えてみるという方法です。
ここでいうキーワードとは、「プライベート」と「ヒストリー」の2つです。
私見ですが、この2つにカテゴライズされる企画は、広報誌や社内報における鉄板ネタであるとともに、アレンジしやすい企画でもあります。
そのため、ネタに困ったら基本に立ち返る意味で、この2つのキーワードをもとに考えてみると案外、新しいネタが出てくることがあるんです。
では、それぞれのポイントについて説明していきます。
「プライベート」を開示はネタになる
まずは「プライベート」ですが、これは単純に、ビジネスにおいてはあまり見せない「私的」な部分もどんどん見せていきましょうということです。
なぜなら、人は結構「他人のプライベート」に興味があり、それがビジネスで接していて「表面的には知っている人」ならなおさらだからです。
また、プライベートを知ってもらうと読者との距離も縮られ、信頼関係の構築にもつながります。
では、広報誌などにおいて、具体的にどう開示すれば新しいネタになるのか?
私がよくおすすめしているのは、「トップの方のプライベートの開示」です。
社員さんや職員の方が、自分の趣味や休日の過ごし方をオープンにしているコンテンツはよく見かけますが、トップの方がプライベートについて語っている例って、あまりないですよね?
だからこそ、意味があるんです。
「社長の休日に1日密着!」という企画で、朝起きてから寝るまでの様子を写真とスケジュール表と文章で構成してもいいし、「教えて!社長の昼ごはん」などと題して1週間分の社長の昼ごはんを写真付きで紹介しても面白いかも知れません。
いずれにしても、かしこまった「ごあいさつ」からはうかがえない、トップのお人柄が垣間見えることでしょう。
こんな感じで「プライベートの開示」という基本ネタをベースに、少し角度を変えて考えてみる。それこそがネタのマンネリからの脱却法になるのです。
トップのプライベートについては、現実的には色々と限界があるでしょう。
でも広報誌でも会報誌でも、読者がトップの素顔を知ることは安心感や信頼感にもつながるメリットがあるはずです。
このように、「プライベート」をキーワードに、さまざまな角度から企画を考えてみてください。きっと、新しいネタが浮かんでくると思いますよ。
「ヒストリー」というストーリーはネタになる
次のキーワードは「ヒストリー」です。
歴史、あゆみ、足跡、沿革、などなど色々な呼ばれ方をしますが、要はそれまでの「経緯」です。
自社の創業から現在までの経緯、事業所の発足から現在までの経緯、あるいは、1つの商品・サービス・プロジェクトなどの企画から完成までの経緯、さらには、役員の方の入社時から今までの経緯など、さまざまなパターンが考えられるでしょう。
それって、社内の方やご本人からすると面白みのない話だったり、もしかすると、思い出したくない苦労話だったりするかも知れません。
でも、そういった事情を知らない読者にとっては、興味深い物語であることが少なくありません。
そして、文章が読まれなくなりつつある昨今でも、起承転結をつくりやすい「ストーリー化」は、文章を興味を持って読ませるテクニックの一つでもあります。
もし社内に、ストーリー化に適した素材があったら、ぜひそれをネタにしてみましょう。
そして、お気づきですか?
「プライベート」も「ヒストリー」も、誤解を恐れずに言えば、いわば「裏話」です。
自社にまつわる、そしてターゲットや発行目的に合致しそうな裏話があったら、ぜひコンテンツ化して発信してみてください。
意外と、ご自身が思っている以上の反響があるんじゃないかと思いますよ。
広報誌のネタに困ったら「切り口」を変えてみる
では、最後の解決法です。
それは「切り口」を変えてみるという方法です。
同じネタでも、切り口を変えるだけで新しい企画に生まれ変わり、新鮮な目で読んでもらえうことが十分可能になります。
というわけで、切り口の変え方の例を2つご紹介いたします。
「過去・現在・未来」でとらえてネタを生み出す
まずは、「過去・現在・未来」で切り口を変える方法です。
例えば、社員(職員)紹介の企画でも、過去・現在・未来という時間軸を変えるだけで、下のような、まったく別の企画を作ることができます。
①過去と現在でとらえた企画
「比べてみました!社員の昔と今」
この企画では、新人時代はできなかったけれど今はできるようになったこと(成長点)や、逆に、今は薄れつつあるかも知れない新人の頃の「初心」などを併記することで、その社員の意識の変遷にスポットライトを当てる企画です。
そしてもうひとつ。
②現在と未来でとらえた企画
「社員が語る未来のわたし」
こちらの企画では、今後、自分はどんな点を伸ばしていきたいか(成長点)、どんな意識を持ちたいかなど、自分に関する抱負を語っていただきます。
いかがでしょう?①も②も、自分自身の「成長点」を語っていただく点は同じです。
でも印象はまったく異なりますよね。
突き詰めれば同じネタでも、時間軸を変えるだけで、これくらい印象を変えることができるんです。
「写真・数字・人」でまとめればネタは変わる
そしてもう一つが、「写真・数字・人」でまとめて、切り口を変える方法です。
例えば、ある施設を紹介する企画があるとします。それを「写真・数字・人」でまとめるとすると、それぞれこんな企画が考えられるんじゃないでしょうか。
①写真でまとめる企画
「写真で振り返る!⚪︎⚪︎施設のあゆみ」
これは、タイトルの通り⚪︎⚪︎施設が着工してから完成し、現在に至るまでの過程を写真で振り返りながら紹介する企画です。
実際の写真が時系列で誌面上に並べば、施設の成り立ちや建てられた背景などを、臨場感のあるドキュメント風の誌面になると思います。
そして、ふたつ目は、こんな感じでいかがでしょうか。
②数字でまとめる企画
「数字でチェック!⚪︎⚪︎施設のすごいトコ」
これは⚪︎⚪︎施設の強みやアピールしたいポイントを「数字」で紹介する企画です。
利用者様や働いている人の数を載せて規模感をアピールしたり、延べ面積を何かの面積と比べて載せたり、所有している設備の数を載せたり、歴史のある施設なら築何年かを載せたり、さらには、可能なら売上的な数字などを出してもいいでしょう。
そんな感じで、数字を切り口にいろんなポイントをピックアップしていく企画です。
そして、3つ目は、こんな感じです。
③人でまとめる企画
「施設長が語る!⚪︎⚪︎施設を支えるメンバーたち」
これもタイトルの通り、施設を統括する立場の方がそこで働く人々を紹介する企画です。
施設長がインタビュー形式で、働く人たちの特徴や雰囲気を語るもよし、一人ひとり紹介文を掲載して、そこに施設長からのコメントを追加するもよし、座談会形式で語り合ってもらうのも面白いかも知れません。
いずれにしろ、職員の顔写真と言葉で構成されたコンテンツのため、①②の企画とはまったく異なる印象の誌面になるでしょう。
広報誌のネタは「アプローチ」次第で別物になる
ここまで、広報誌のネタに困った際の解決法をいくつかご紹介してきましたが、いかがでしょう?
お気づきの方もいらっしゃるかもですが、広報誌にしろ社内報にしろ、定期刊行物のネタって、根本はそこまで変わらないんです。
それってTV番組と一緒だなって思うんです。
バライティ番組だったら、クイズにトークにドッキリにと、ジャンルは同じでも、まったく違うテイストの番組がたくさんありますよね。
それと同様に、「見せ方」や「捉え方」といったアプローチの方法次第で、ネタの枯渇は避けられるのです。
ちなみに、ここまで紹介してきた方法に、さらに「形式」の違いも掛け合わせれば、もっと幅広いアレンジができます。
ここでいう形式とは、例えば「Q&A」「図説」「漫画」「ルポ調」など、最終的に誌面に落とし込む際の形のこと。
そういった要素を足し算したり掛け算していくことで、よくある基本的なネタでも新鮮さや面白が生み出されていくのです。
もし、広報誌や社内報のネタに困ったら、いろんな角度でアプローチしてみたり、いろんな要素を足したりかけたりしながら、アレンジしてみてください。
きっと、新しいネタが浮かんでくると思いますよ!
広報誌や社内報などの企画にお困りのご担当者様は、ぜひ、お問い合わせフォームよりご相談ください。企画立案のノウハウを共有しつつ、効果の出るパンフレット・チラシづくりに協力させていただきます!
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