私が、会社案内パンフレットや広報誌などの制作をご依頼いただいた時、最初のお打ち合わせで必ずお伝えしていることがあります。
それは、知識やノウハウなどではなく、パンフレット作りとは本来こういうものですよ、という「本質的な部分」に関するお話です。
大前提といってもいいかもしれません。
ただそのお話の中には、お仕事を頂く受注業者としては正直、言いにくい内容も含まれています。
そのため、多くの制作会社さんはあえて言わない内容だと思います。
事実、私自身サラリーマン時代は、自分一人の裁量で動かせる案件でしか、その話はしませんでした。先輩や上司と組んだ案件の時は、黙っていたんです。
「余計なこと言わんでいい」
って、上の人に怒られそうだったからです。
でも、たとえ言いにくくても、きちんと最初にプロの側から伝えておきべき大切なポイントだと思っているので、フリーランスになってからは、必ずパンフレットを作るクライアントにはお伝えしてきました。
というわけで、今回は、会社案内パンフレットや広報誌などを作ろうとしている方にお伝えしておきたい、パンフレット制作の「本質」について、お話しさせていただきたいと思います。
これを知っていると、直接的にパンフレット作りが楽になったり、効率的になるわけではありませんが、少なくとも理解が深まることで、巡り巡ってスムーズで、ストレスの少ないパンフレット制作が可能になると思いますよ。
会社案内パンフレットや広報誌は実はオーダーメイド品
まず、多くの方が意外と見過ごしている事実なんですが、会社案内や広報誌などのパンフレット類って、実は「オーダーメイド品」なんです。
だって、企画から構成、文章、デザインと、すべて自分たちで考えて作り上げるオリジナル品ですよね。
間違いなく、唯一無二の「一点もの」を作っているのです。
他にオーダーメイド品というと、どんなものが浮かびますか?
例えば、オーダーメイドのスーツとか、規模の大きいものでは注文住宅なんかもオーダーメイド品ですよね。
それと一緒なんです。
つまり何が言いたいかというと、オーダーメイド品であるがゆえに、パンフレット制作には「時間と手間」がかかるということです。
これまで、初めて会社案内や広報誌などの担当になられた方は、ほぼ間違いなく「1冊作るのがこんなに大変だとは思いませんでした」とおっしゃられていました。
事実、数ページのパンフレットであっても、きちんと企画・構成から考えて1冊作るのって結構、大変なんです。
でも、注文住宅やオーダースーツと同じ、オーダーメイド品であることを念頭に入れておけば、そこまで予想外には感じないんじゃないかと思います。
こんなこと、制作会社はあえて言いませんよね。特に受注前は。でも私は、お伝えするようにしています。
その理由はたった一つ、パンフレットを制作する「途中」でネガティブな印象を持ってほしくないから。だから、あらかじめお伝えしているのです。
この部分をお伝えせずに制作に入ってしまうと、後々「あ〜大変だった。もう二度とパンフレットなんか作りたくない」と思われてしまう可能性が高まってしまいます。
パンフレットはきちんと作れば役に立つツールだし、もっと多くの人に作ってビジネスにつなげてもらいたいと思っているからこそ、「オーダーメイド品だからこそ、作るのが大変」であるという真実を、しっかり最初にお伝えしています。
パンフレット類はWebサイトより作るのが大変な場合も
少し前までは、Webサイトの方がパンフレットより作るのが大変だったように思います。
でも近年では、1〜数ページ程度のサイトなら簡単に、しかも低価格で作れるサービスがどんどんできていますよね。
中には、素人でも自力で作れてしまうサービスもあったりして、驚かされます。
そういったサイト制作と比べると、パンフレット類の方が作るのは大変でしょう。
なぜなら、上記のようなサイト制作では、ほぼほぼ「テンプレート」が用意されているからです。
つまりは、「セミオーダー」ってやつですね。
セミオーダーものより、オーダーメイド品の方が作るのが大変なのは当然です。
でも、最近のそうしたサイト制作をご存知の方が、パンフレット制作にかかる時間や手間、そして価格を知ると、驚かれるケースが少なくありません。
紙媒体でも、チラシなど1枚もののデザインをテンプレートで制作できるサービスはたくさん見かけます。
でも、パンフレットのような複数ページのデザインを手軽に作れるテンプレートサービスは見かけません。
それは、テンプレート化が不可能だからです。
つまりそれだけ、会社案内や広報誌といったパンフレット類は、企画やコンセプトをベースに文章や写真、デザイン、そしてレイアウトが連動して成立しているということです。
だから、どうしても手間と時間がかかってしまうことをご容赦ください。
パンフレット類は急いで作らない方が良い
会社案内や広報誌などのパンフレット類を、急いで作るとロクなことがありません。実体験からも言わせてもらいますが、本当に誰も得しないんです(笑)。
これも、本質的に手間と時間がかかるオーダーメイド品であるということに起因しています。
そもそも時間がかかる制作物を、無理して早く仕上げれば、必ずどこかにひずみが生まれます。
例えば「印刷事故」です。
印刷事故とは、誤字・脱字、レイアウトのズレ、写真の載せ間違い…こんなところで済めばまだいい方で、ロゴデータの解像度が粗いままだったり、入稿データを間違えたり、といった、要は人為的(まれに機械的な)なミスによる印刷物上の間違いのことです。
印刷事故は、紙媒体を制作するプロが最も避けなければならない「刷り直し」につながるミスです。
そして、私の主観ではありますが、印刷事故はだいたい急いで作った時に起こります。自動車の事故と同じですね。
そのため、パンフレット類を作るなら制作期間に余裕を持ってスタートしましょう、とお伝えするようにしています。
時間の余裕を持ってじっくり作ることが、結局、一番効率的な進め方なのです。
会社案内パンフレットや広報誌はすべてハンドメイド品
これも忘れられがちですが、会社案内パンフレットや広報誌はすべてハンドメイド品です。
自動化されている工程は、印刷工程の一部だけで、制作会社が担当している工程は、すべて手作業で進められています。
もちろん、今では制作のすべてがパソコン上で行われ、さまざまなアプリを使って便利に作れるようになりました。
とはいえ、キーボードひとつ叩けば勝手にデザインしてくれるわけでもなく、文字が修正されるわけでもありません。
手作業によってかかる時間がパソコンやアプリによって省略されただけで、すべて手作業であることに変わりはないんです。
パンフレット作りは手間と時間がかかると先述しましたが、それはハンドメイド品であることも理由の一つです。
そして、急いで作るとロクなことがないとも言いましたが、それも人の手作業だからです。
フルオーダーメイドの品を、フルハンドメイドで作っている。そんなの、大変に決まっていますよね。
この真実をきちんと理解した上で制作に臨んだ場合と、気づかないまま制作に臨んだ場合とでは、パンフレット制作に対する印象が大きく異なってくるでしょう。
当然、前者の方がストレスは少なく、イレギュラーな出来事などにも冷静に対処できると思います。
「だって人間が手作業してるんだから」と思えるからです。
会社案内パンフレットや広報誌は一緒に価値を作り出すもの
ここまで、パンフレット類は実はオーダーメイド品であり、ハンドメイド品でもあるために作ることが簡単ではないと説明してきました。
ただ、もしかすると、それらの説明を「制作会社側の言い訳」に感じた方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、ここまでの説明だけだと、そう感じる方がいらっしゃるのも無理はないと思います。でも、それは誤解です。
なぜなら、会社案内パンフレットや広報誌などは、クライアントと制作会社が協力して進める、いわば「協働プロジェクト」だからです。
パンフレット制作という業務は、制作側が提供する価値(パンフレット)の対価として料金をいただくのではなく、クライアントと制作会社が「一緒に価値を生み出す」作業なのです。
だからこそ、ここまでお話してきたオーダーメイドやハンドメイドであるがゆえの大変さを、クライアントも「当事者」としてあらかじめ知っておいていただきたいのです。
パンフレットの制作は「等価交換」の意識では難しい
これは本当に申し上げにくい事実なのですが、時々、パンフレットの制作を「等価交換」の取引と思われている方がいらっしゃいます。
等価交換とは、100円の価値の商品と100円の代金を交換する取引のこと。飲食店やアパレルショップなど、小売店なんかはすべてこれに当てはまりますね。
つまり、「等価交換」は既に出来上がっている「価値(商品)」をお金と交換するわけですから、一緒にこれから価値を生み出していく「協働プロジェクト」とはまったく異なる取引方法です。
にもかかわらず「***円払ってるんだから、それに見合ったデザインを出してくれないと」と、等価交換の考え方でサービスを求められるケースが稀にあります。
ご満足のいくデザインをお出しできていないから、そうしたお気持ちになられるわけですから、そこはプロとして反省し、対処しなければなりません。
とはいえ、クライアントが等価交換の考え方のままでは、一緒に良いデザインを生み出していくことが難しいのも事実なのです。
協力こそがパンフレットのクオリティを高める一番の手段
我々、受注側は制作のプロではありますが、クライアントからご意向を伺ったり、資料を頂いたり、アンケートに答えていただくなど、さまざまにご協力を頂かなくては制作を進められません。
そして何よりも、クライアントはその業界のプロでいらっしゃいます。
その知見と、私たち制作側が持っている編集デザインの知見を組み合わせることで、読者に読んでいただける、そしてその結果クライアントに利益が還元されるパンフレットが作れるのです。
時々、「あとはよろしく」とばかりに、丸投げに近い感じで依頼されるクライアントがいます。もちろん、それでも作れないことはありません。
ただ、クオリティの高い、本当に役立つパンフレットをそのやり方で作り上げることは難しいと私は考えています。
クライアントと制作側が、一緒に「読者」の方を見て協力し合う。そのスタイルで制作することが、パンフレットのクオリティを高める一番の手段だと思っています。
パンフレット制作の真実を伝えることもプロの役割
ここまでお伝えしてきた真実の中には、「儲ける」という意味ではクライアントにはお伝えしない方が良い内容もあると思うんです。
「え、そんなに手間と時間かかるの…じゃあ作るのやめようかな」「え、協働で?…お願いしたら全部やってくれるんだと思ってました」
となって、失注する恐れがなきにしもあらずだからです。
でも、手間や時間がかかることや、協働で作った方が良いことをすっとばして話を進めてしまうのは、ある意味では不誠実な対応だと考えています。
当ラボでは、できるかぎりオープンに真実を話し、ご理解いただいた上でお仕事を進めさせてもらえたらと思っております。
これまで約20年、編集ライターとしてパンフレット制作を手がけてきた中で、結局そのスタンスが、お互いに仕事をしやすい関係性作りにつながり、結果、ご満足いただけるパンフレットができあがると実感しているからです。
会社案内や広報誌などのパンフレット類の制作にお困りのご担当者様は、ぜひ、お問い合わせフォームよりご相談ください。協働プロジェクトの体制で、効率の良い制作と、効果の高い一冊を提供させていただきます!
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