企業の広報担当者さんやライターさんなら、インタビュー取材が必要になるケースがあるでしょう。
でも、インタビュー取材が苦手な方にとっては、たった1名へのインタビュー取材でも、結構プレッシャーなんですよね。
そこで今回は、インタビュー取材が苦手な皆さんの、特に「事前準備に関する不安」を軽くするノウハウをお伝えしたいと思います。
これまで約20年間、延べ1,000名以上にはインタビューしてきた私の体験をもとにしたノウハウなので、実践的な内容になっていると思いますよ。
一般的な「インタビューの手順」といったマニュアル的な記事は、検索すればいくらでも出てきます。
でも、こうした実践的なノウハウ記事は、本当にインタビュー取材を重ねてきた人にしか書けないため少ないと思うので、ぜひ参考にしてみてください。
インタビュー取材の事前準備は考えすぎなくてOK
インタビュー取材が苦手な人にとっては「事前準備」の段階からもうドキドキがはじまっていますよね。
そのため、もうこの時から余計な心配を抱え込みすぎてしまうんじゃないでしょうか。
でも、結論からいえば、最低限やるべきことをやっておけば、そんなに考えすぎなくてもOKだと思います。
というと「その最低限がわかんないから不安なのよ!」という声が聞こえてきそうでうね。
確かにその通りです。
なので、今回は、最低限やるべきことはなにか?という点にフォーカスして、皆さんの不安を取り除いていきたいと思います。
ちなみに、このコラムで扱う「インタビュー取材」とは、広報誌や会社案内パンフレットなどの紙媒体に載せるもの、つまり最終的には「文章」として載せるインタビューを想定しています。
その場で聞いて完結する、動画などのインタビューとはちょっと違うと思いますので、ご了承ください。
取材対象については「徹底的」に調べなくてもOK
「インタビュー取材の進め方」といった感じのブログ記事を読むと、必ずといっていいほど「取材対象をしっかり調べましょう」と書かれていませんか?
これ、間違ってはいませんが、実にあいまいで不安をあおる書き方だと思います。
だって「”しっかり”って、どのくらい?」と思いませんか?1時間?3時間?それとも1日?
少なくとも、インタビュー取材の進め方を調べようとしている方に対して、親切な説明ではないと思います。
ほかにも、私が実際に見た記事では「事前調査には取材時間の倍はかけましょう」とか「取材対象と同じ知識量になるまで調べましょう」という説明もありました。
「取材時間の倍」って、一体何を根拠に?と思うし、取材対象と同じ知識量になることなんて無理です。
もし、ネットの情報やクライアントから支給された資料を読み込んだだけで取材対象と同量の知識を持てたら、取材時にはもう即戦力でその会社で働ける人材になってますよね。
そんなの無理でしょう、どう考えても。
このように、なぜかインタビュー取材に関するマニュアル系のブログ記事には、「絶対このライターさん取材したことないだろうな」と思われる内容がよく書かれている印象があります。
でも!それを真に受けて、取材対象を「徹底的」に調べる必要なんてありませんので、ご安心ください。
とはいえ、取材対象についての調査が必須であることはその通りです。
では、どのくらい調べたらいいのでしょうか?私の答えは、「事前質問シートが作れるくらいまで」です。
インタビュー取材を実施する場合、ほぼ間違いなく当日に聞く内容をまとめた質問シートを事前に作成し、インタビュー対象と共有しますよね。
そして、戻ってきた回答をベースに、当日さらに深くインタビュー取材をしていくことが多いかと思います。
時には、回答が戻ってこないままインタビューすることもありますが、いずれにしろ、「事前質問シート」は作ることが多いはずです。
私は、この事前質問シートをしっかり作ることができれば、インタビュー取材は半分以上、終わったようなものだと思っているので、取材対象についての調査はこのシートを作れるくらいまで、と決めています。
確かに、なーんにも調べずに、なーんにも知らないままだと、事前質問シートすら作れないので、それはまずいでしょう。
でも、インタビューの目的に沿った「疑問点」が出てくるくらいまで調べて、事前質問シートを作ることができれば十分だと考えています。
それ以上の詳細は、当日インタビューで聞けばいいのです。そのためのインタビューなんですから。
では、もっとわかりやすく説明するために、ここで実例を。
とある鋼材メーカーの「採用案内パンフレット」に載せる「先輩社員の声」についてインタビューした時の話です。
取材対象である社員さんに関する資料を読んだところ、現在は「営業職」ですが、数年前までは「現場職」で、鋼材の切断加工に関わられていたとのことでした。
これなんて質問の宝庫ですよね。この事実から、私は以下のような質問を考えました。
⚫️「数年前まで現場職だったとのことですが、もともと現場志望だったのか、営業志望だったけれど現場配属になったのか、どちらでしょうか」
⚫️「現場から営業への異動など、部署が変わるケースは貴社ではよくあるのでしょうか」
⚫️「現場から営業に移ったことで得られた気づき、活かせている知見などはありますか」
いかがでしょうか。
どれも、採用案内パンフレットの読者である就活生にとって、気になる話題を引き出す質問になっているかなと思います。
このように、掲載する媒体の目的に沿った質問を引き出すことができれば、事前調査は十分といえるでしょう。
というかこのケースでは、渡された資料を読んだところ、格好の疑問点が書かれていただけなので、「調べる」とか「調査する」なんて大層なことはしていません。
つまり、取材対象についての情報は、「前提」として知っておくべきことを頭に入れておく、そして、その情報をもとにさらに詳しく聞くための事前質問シートを作っておく、くらいの意識で問題ないと思っています。
ちなみに、必要な質問数については、取材対象の専門性の高さやライティングの文字数などによって変わってくるので、「これくらいの質問数でOK」とはなかなか言えません。
いずれにしろ私は、このやり方で取材対象と同じ知識量になったことはありませんし、調査時間がインタビュー時間の倍もかかったことはありません。
また、このやり方でインタビューに臨み、クライアントから「君は調査不足だ」などと言われたこともゼロです。
というわけで、取材対象の調査は「事前質問シート」をしっかり作ることを目的に進めることをおすすめします。
それはそれで大変かもしれませんが、少なくとも「徹底的に調べる」といった、あいまいな方向性で進めるよりは、建設的に取り組めるはずです。
取材前の事前質問シートではできるだけ「具体的」に聞けばOK
では、その「事前質問シート」をつくる際のコツをお伝えします。
インタビュー取材が苦手な方は、事前質問シートの段階でもあれこれ考えすぎて不安が増してしまうことがあるでしょう。
でも、結論から言うと、とにかく「具体的」に質問する。それだけでOKです。
そこを意識するだけで、インタビュー取材の要である事前質問シートのクオリティを一気に高められるのです。
例えば、採用案内パンフレットにおいて、先輩社員の声を通して自社の業務内容や社風を就活生に届けるインタビューするとします。
その際、こんな質問を用意したとしたらどうでしょう。
⚫️「今⚪️⚪️さんが取り組んでいる業務について教えてください」
決してズレた質問ではありません。求職者に向け、先輩がどんな業務に取り組んでいるのかお伝えすることは意義があります。
でも、「質問の仕方」は決して良いとはいえないと思います。
なぜなら、言葉の意味が幅広い質問だからです。つまり「バクっと」してるんです。
この質問を投げかけられた取材対象者も、どの業務について話せばいいのかわからず、おそらくすぐに(適切に)は答えられないんじゃないかと思います。
では、どうしたら良い質問になるのか?
私がおすすめする方法は、3つあります。
まず最初の方法は、「最も」や「一番」をつける。
それだけで、取材対象者が答えやすい質問になるんです。その証拠に、以下をご覧ください。
⚫️「今⚪️⚪️さんが、最も力を入れて取り組んでいる業務について教えてください」
いかがでしょうか?
「最も」「一番」をつける、というのは、要は「ベスト」なことについて尋ねる、という意味です。
これなら回答が絞られ、相手も答えやすくなることがわかると思います。
そして次は、「質問を分解する」という方法です。これも、先述した以下の質問をベースに実践してみます。
⚫️「今⚪️⚪️さんが取り組んでいる業務について教えてください」
この質問を、読者である就活生にとってわかりやすく分解すると、こんな感じでしょうか。
⚫️「⚪️⚪️さんが入社して初めに取り組んだ業務と、現在最も力を入れて取り組んでいる業務について教えてください」
これは時系列で分解した例ですが、いかがでしょう。
「最も」をつけた時と同様、分解するだけで相手が答えやすい質問になっていますよね。
そして、入社して初めに取り組んだ業務と、現在最も力を入れて取り組んでいる業務が異なる回答だった場合は、「何年目くらいに変わったのか」とか「なぜかわったのか」といっ質問が必然的に出てきます。
逆に、どちらの業務も同じだったら、「入社以来、一貫して取り組んできたことで得られた気づきは?」とか「別の業務内容に興味は?」などと質問を重ねることができます。
では、最後の方法です。それは、「変化」した点や「成長した」点を聞くという方法です。
これも、前2つのポイント同様、「今⚪️⚪️さんが取り組んでいる業務について教えてください」という質問をベースにした場合、私なら以下のように修正すると思います。
⚫️「今⚪️⚪️さんが取り組んでいる業務を通じて成長したと感じる点を教えてください」
あるいは、
⚫️「⚪️⚪️さんが貴社に入社する前と後で、さまざまな業務経験を通じて成長したと感じる点を教えてください」
つまりは、ビフォアとアフターを聞いているわけですが、この質問ポイントはあらゆるインタビューにおいて有効なので、覚えておいて損はないと思います。
事前質問シートで「具体的に」聞くコツとして挙げた、「最もをつける」方法、「分解する」方法、「成長した点を聞く」方法は、つまりは質問を絞り込んでいるだけなのです。
ただそれだけですが、確実に聞き手にとって答えやすい質問になっていると思うので、良い答えを導き出すインタビューにつながると思いますよ。
取材前の事前質問シートは「起承転結」より「カテゴライズ」でOK
これも、インタビュー取材に関するあるブログ記事で読んだのですが「事前取材シートには『起承転結』がある方が望ましい」と。
正直「んん?」と思いました。
なぜなら、取材した内容を文章化する際に起承転結をつけるのはわかりますが、質問自体にどうやって起承転結をつけるのだろう?と思ったからです。
まあ、できるのであれば確かに質問自体にも起承転結があった方が良いのかもしれませんが、少なくとも私には、ちょっとイメージが湧きにくかったです。
私の場合は、質問の起承転結よりも「カテゴライズ」を重視しています。
例えば、これまで例に挙げてきた、採用案内パンフレットに載せる「先輩の声」であれば、以下のように事前取材シートを作ると思います。
【学生時代について】
⚫️専攻していた学びを教えてください。
⚫️上記の学びのどのような点が楽しく、どのような気づきを得られましたか。
【入社後について】
⚫️学生時代の学びが、現在の業務に活かせている点があれば教えてください。
⚫️入社してイメージ通りだった点と、そうでなかった点を教えてください。
⚫️入社前と後で、最も成長したと感じる点を教えてください。
【読者に向けて】
⚫️読者である就活生の方へ、貴社の業務や就業環境についてPRしてください。
⚫️どのような後輩と一緒に働きたいですか。
本番用は、もう少し質問数もカテゴリー数も多くなると思いますが、だいたいこんな感じでしょう。
このように、カテゴリーで分けて質問した方が、取材対象者も答えやすいと思うのです。
そして、これくらいのカテゴリー分けをした上で、大体の時系列に従って聞いていけば、起承転結まではいかないまでも、ある程度の質問の流れというか、メリハリは生まれるのでそれで十分だと思います。
インタビュー取材での「わからない」は恥と思わなくてOK
かつて出版社にいた頃、インタビュー取材に苦手意識を持つ後輩がいました。
彼女はよく「自分が知らないことを話されると、焦ってしまう」と言っていました。
気持ちはわかります。
僕も編集ライターを始めたばかりの頃は、インタビュー取材で知らないことを言われた時に「わかりません」とか「それどういう意味ですか」なんて聞けませんでしたから。
でも、そんな私の意識を変えてくれた上司の一言があります。それは「インタビューって、知らないことを聞きに行ってるんやで?」という言葉でした。
おっしゃる通りですよね。
もちろん、取材対象の人や業界に関する基本的なことは調べていきますし、知っておく必要があります。
でも、インタビュー中に相手の口から出てきた業界の用語や慣習、社内の仕組みなどについては、わからなければ堂々と聞けばいいのです。
だって、そんなことまで知らなくて当然だし、そのためにインタビュー取材をしにきたわけですから。
もっといえば、わからない単語や事実関係が出てきた時に、逐一ストップをかけて「それどういうことですか?」と確認する意識こそが、インタビュー取材のクオリティを高めるのです。
とはいうものの、頭ではわかるけどなかなかそれが実行できないのよ…とお困りの方に、かなり効果的な”使える”フレーズをお教えします。
これは私がほぼすべての取材で、特に専門性の高い取材の場合は、絶対にインタビュー前に取材対象者に話す言葉です。
「貴社の事業や⚪︎⚪︎さんについて、基本的なことは調べてきました。とはいえ、やはり門外漢ではありますので、今日のインタビューでももしかしたら、小学生のような質問をしてしまうかもしれませんが、どうかご容赦いただき、お答えいただけるとありがたいです」
このフレーズを、頭を下げながら言っています。
そして、このフレーズを最初に伝えたインタビューで、本当に基礎的なことを「すみません…」と言いながら質問しても、怒られたり、不機嫌になられたことは1回もありません。
低姿勢になって、正直に、丁寧に聞いている人に向かって怒る人なんて、そうそういません。ですから、安心して知らないことをどんどん聞いてみてください。
そして、もう一つ加えると、実は「小学生のような質問」ほど、インタビュー取材において重要な回答を引き出したりするんですよね。
インタビュー取材は本番よりも事前準備の方が重要
これは私だけの印象かも知れませんが、インタビュー取材が苦手なライターさんや広報担当社さんの多くは、主に当日のインタビューの方を心配をされているように感じます。
もちろん「本番」はそちらですから、当日のことを気に病むのはわかります。
でも、インタビュー取材は事前準備こそが肝心であり、個人的には事前準備がきちんとできれば、そのインタビュー取材は半分以上成功したようなものだと思っています。
というわけで今回は、事前準備をスムーズに進めることで少しでもこの段階から不安を取り除くためのノウハウをお伝えしました。
今、苦手なインタビュー取材を控えていて、不安を抱えている方のお役に立てたら、幸いです。
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