大阪吹田の編集ライティング&デザイン制作

広報誌の制作でやりがちな失敗|広報と広告の混同

広報と広告の違いを示す人

これまで、さまざまな業界のクライアントと一緒に、多種多様な広報誌を制作してきました。

その中でひとつ、結構、多くのクライアントがやってしまいがちな失敗がありました。

それは「広報」と「広告」を混同してしまうことです。具体的にいうと、広報誌の誌面の中で広告を打とうとしてしまうのです。

確かに、名前は似てます。

そして、クライアントによっては広報と広告の部署が一緒というケースも少なくありません。

小さな会社だったら、すべてをひとりの担当者さんが兼ねている場合もあるでしょう。そうなると、余計に混同してしまいがちなんですよね。

でもこのふたつは混同してはいけない、「まぜるなキケン」的な行為なんです。

ということで、広報と広告を混同するとなぜいけないのか?どんなデメリットがあるのか?

今回のコラムでは、広報誌の制作でありがちなこの失敗についてご紹介します。

目次

広報と広告では、そもそも目的が大きく異なる

「広報」と「広告」を混同するデメリットを説明する前に、そもそも、それぞれがどういう活動を指しているのか、おさえておきましょう。

広報とは信頼関係を築き「好き」になってもらうこと

まず、「広報」についてですが、改めてネットで調べてみると、大まかには同じだけど、微妙に違った説明があちこちに上がっていますね。

企業の規模や業界、広報専門の部署があるのかないのかなどによって、広報のとらえ方や実際の業務内容に差が出てくるからでしょう。

ともあれ、私は広報を以下のようにとらえています。

企業や組織が社会(主にステークホルダーや見込み客)に向けて情報を発信し、良好な関係を築くことで企業の信頼性と価値を高める活動。

という感じです。

よく、広報の目的を端的に表す言葉として「Love me」という表現が使われます。

社会(主にステークホルダー・見込み客)から「愛される」ことを目指し、まずは認知を広げて知ってもらう、そして、振り向いてもらうために興味を喚起し続けて「好き」になってもらう、ということですね。

もちろん、それには時間がかかるので、広報には中・長期的なスタンスが求められます。

そのため「広報は漢方薬」ともいわれています。

そんな広報誌には、例えばどんな内容が載っているのでしょうか?

今、実際に当ラボが手がけている、大阪のとある総合病院さんの広報誌の項目を例に挙げてみます。

・各課の新スタッフ紹介
・スタッフのふるさと自慢!
・リハビリ室がリニューアルしました!
・かんたん体操!腰痛の軽減
・TOPICS:市民講座「消化器疾患を知る」のご紹介/院長の万博体験記
・かかりつけ医の紹介
・近隣のおすすめ飲食店の紹介

いかがでしょう?

働くスタッフに関する情報だったり、読者のためになるアドバイスだったりと、いずれにしろ、読者と病院の距離を縮める内容になっていると思いませんか?

こうした内容を発信し続け、メリットを感じてもらうことで名前を覚えてもらい、好きになってもらうわけです。

広告とは商品のメリットを伝えて「購入」してもらうこと

次に「広告」ですが、こちらも改めて調べてみると、広報以上に説明の文言がさまざまでした。

それらの説明をまとめると、だいたいこんな感じかなと思います。

購入してもらうことを目的に、商品やサービス、事業の情報(メリット)を積極的に世間に周知させること。

先ほど、広報の目的を表す言葉として「Love me」とお伝えしましたが、それに対して広告の目的は「Buy me」と表現されます。

そして、広報が信頼関係を築くための「漢方薬」なら、広告は購入してもらうための「即効薬」ともいわれています。

広報誌の中で広告を打つと逆効果になることもある

いかがでしょう?

広報と広告は、似ているのは字面だけであって、実は目的も性質も異なっていることがお分かりいただけたかと思います。

では、その広報と広告を混同して、広報誌の中で広告を打つとどんなデメリットが発生するのかお伝えしてきます。

読者に「好かれる」ための行為の中で「嫌われる」行為をしている

先述したように、広報とは自社のことや自社の商品・サービスを「好きになってもらう」ための信頼関係づくりです。

読者(見込み客)に愛され、信頼されるには、企業が伝えたい内容ではなく、読者の知りたい情報やメリットになる情報を発信する意識が欠かせません。

これが、広報誌の制作において最も重要なポイントです。

一方、広告は完全に「企業が伝えたい内容」です。そのため、広告は基本的に「嫌われるもの」だという認識を、広告制作に携わっているクリエイターは持っています。

実際、テレビCMはとばされ、ポスティングチラシは捨てられ、テレアポはすぐ切られ、何度も表示されるネット広告は鬱陶しがられますよね。

興味のない商品・サービスの広告に繰り返しふれると、嫌悪感や不信感すら抱いてしまうことがあります。

理由は「自分が求めていない情報」であり「自分にメリットがない」からです。

広報誌を手に取り、「ふむふむ、ためになるなあ」と思いながら読んでいる最中に、いきなり企業の都合でしかないこの「求めていない情報」が載っていたら、多くの読者が興醒めすると思いませんか?

例えると、今まで自分に親切にアドバイスをしてくれて、フレンドリーに接してくれてた人が、突然「この健康食品、すごくいいんだけど買わない?」って言ってきたみたいな?

これが、広報誌の中で広告を打つことのデメリットなのです。気持ちは分かるのですが、読者が違和感を覚える行為であることは明白ですよね。

好かれるための行為の中で、嫌われる行為をしてしまっているのです。

広報誌は自社で内容を決められるから、広告と混同しやすくなる

では、どうして広報誌の中で広告を打つという失敗が起こるのでしょうか。

これは私の見解ですが、「広報誌」という存在が広報と広告の中間に位置する媒体だからだと考えています。

どういうことかというと、広告とは基本的に企業がお金を払ってテレビCMの枠や新聞広告のスペースを買い、自社商品やサービスなどについて宣伝する行為です。

この場合、広告の内容は企業側で自由に決められます。お金払ってますから。

一方、広報とは基本的に、新聞や雑誌、テレビ番組といった第三者の言葉で自社の情報を伝えてもらう行為です。

そのため、お金はかかりませんが、発信される内容を企業側が決めることはできません

そして、第三者(テレビや雑誌など)の目から見て、「社会的に意義がある」と判断されなければそもそもとり上げてももらえません。

こうした点も、広報と広告では大きく異なるのですが、そこで広報誌です。

広報誌は、その名の通り「広報」が目的ですが、発行しているのは企業です。もちろんお金も。

つまり、クライアント自身で掲載内容を決められるため、ついつい自社の広告的な内容を載せようしてしまうのだと思います。

実際、今までに何度か耳にしたフレーズが「どうせお金かけて作るならもっと自社の宣伝を載せろと上司が…」というものです。

そう。この広報と広告の混同は、制作には携わっていない上の方々からの指示であることが少なくないんですよね。

でもここで「それはやめた方がいいです!」とはっきりとNOとお伝えできる制作会社は多くはないでしょう。

受注産業であるこの業界の慣例として、良くも悪くも「クライアントの要望は絶対」という考えがいまだに根強いからです。

でも、だからといって「はいわかりました!」といって広告を載せるのは、一見クライアントに従順なようで、利益に相反する行為だと私は考えています。

クライアントが広報誌で広告しようとしていたら、伝えづらいのは事実ですが、私は「それはやめた方がいいですよ」と、必ず理由とともにお伝えするようにしています

読者のメリットになる情報に変換して発信すれば大丈夫

では、広報誌の中で自社の広告的な内容は一切、載せることができないのかというと、そういうわけでもありません。

ようは見せ方。工夫次第だと考えています。

例えば、老人ホームが発行している広報誌を例にしてみましょう。

そのホームで、今までなかった「1日単位のショートステイ」の受け入れができるようになったとします。

それを誌面で、ショートステイのメリットや具体的な過ごし方の例、さらにはショートステイで利用できる設備や金額の一覧表、最後には職員さんの「おまちしています!」なんてコメントを載せたら…。

完全に広告ですよね。これが広報と広告を混同した、嫌われる載せ方です。

では、どうすれば良いのか。

例えば私なら、まずは「ショートステイ」という利用方法の基本的な説明とともに、ニーズが増えてきた背景などを、あくまでも一般論として載せます。

その上で、ショートステイを利用すると解決できる問題や、ご利用者様・ご家族様に生ずるメリットを紹介します。

そして最後に、「当施設でのショートステイについてご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください」と締めると思います。

つまり、最終的に広告であっても、あくまでも読んで「ためになる」情報に変換して伝える工夫が必要なのです。

広報誌はファンになってほしい人に有益な情報を伝えるための媒体

広報の目的は見込み客である読者との信頼関係を築くこととお伝えしましたが、その先には、顧客を増やしたいという企業としての大きな目的があります。

いわば、そこにつなぐための下地づくりといったところですね。

ということは、誤解を恐れずに、そしてものすごーく、ひろーい意味でいえば、広報も広告の一種だと思うのです。

今まで散々、別物だといっておきながら、ここにきてちゃぶ台をひっくり返してすみません。

でも、だから間違えるのです。だから多くの企業が、ついつい先走って広報をしている最中に広告を打ってしまうのです。

読者は、自分のためになる情報しか受け取りません。

でも、広報活動によって、「この企業は、いつも自分のためになる情報をくれるなあ」と信頼して好きになってもらう下地づくりをしておけば、嫌われがちな広告も受け入れてもらいやすくなるのです。

いかがでしょう。広報誌の中で広告を打ってしまう原因と、そのデメリットがお分かりいただけましたか。

広報誌に限らず、広報とはコツコツ時間をかけ、少しでも読者のためになる情報を提供し続け「ファン」になってもらうための企業活動です。

広報誌は、ファンになってほしい人に、有益な情報を届けるための媒体なのです。

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この記事を書いた人

これまで、教育系出版社、編集プロダクション、デザイン会社などでライター・編集者として約20年、広報誌や会社案内、社内報に記念史、リーフレット、チラシなどを制作してきました。

独立した現在は、主に個人事業主や小さな会社の営業用パンフレットや販促チラシ、Webライティングなどを通して、お客様の強みを言語化し、価値を「カタチ」にするお手伝いをしています。

モットーは「いいパンフレットでいいコミュニケーションを、いいコミュニケーションからいいビジネスを」。

そのために、「つくること」がゴールではなく、「本当に役に立つ」「ビジネスにつながる」パンフレット・チラシをつくります。

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